本研究では、小学校の教育現場における情報機器の活用を想定し、できるだけ安価でなおかつ子どもたちが興味を持ちやすいシステムとして、Raspberry Pi を用いた3Dスキャナの作成を行った。Raspberry Piは5000円程度の非常に安価なコンピュータであり、近年子どもたちに人気のあるMinecraftというサンドボックスゲームの専用版が搭載されている。その大きな特徴がPythonのプログラムによりブロックの設置を制御できる点であり、これを利用して現実世界の物体を撮影し、Minecraftの世界に自動で出力するのが本システムである。物体の撮影にはRaspberry Pi専用のカメラに加え、一定の角度ずつ軸を回転させることができるステッピングモーターを回転台として使用する。物体を側面から見た画像を一定角ずつ撮影し、それをもとに3Dデータを作成し、Minecraft上に出力するため、大まかな形は再現することができるが、コップのように中がくりぬかれている物体は苦手である。一度スキャンした物体のデータはCSVファイル形式で保存されるため、何度でもMinecraft上に再現できる。そして、立体を出力する座標を指定でき、一つの世界に複数の立体を出力することもできるため、立体同士を組み合わせて新しい物体を作成したり、児童が作成した立体を児童同士で共有したりするといった使い方ができる。また、ユーザはMinecraftの世界を自由に動き回れるほか、作成した立体を様々な角度から見る・さわる・壊すといった現実世界ではできないような疑似体験が可能である。まだまだ発展途上ではあるが、1台のRaspberry Piですべての処理を行うため、比較的安価に3Dスキャナを実現でき、金銭的な制約のある教育現場においても導入しやすいシステムであるといえる。